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そこに、莫大な粗利は、必ず陳腐化するとは限らない。
テーブルやイスだって、もしかしたら、将来、アンティークになって値上がりするかもしれない。
しかし、そういうことは例外で、ほとんどの形あるものは比較的短期間に摩滅、消滅して、無価値になる。
だから、企業会計では、資産の減価償却を原則とするのである。
銀行も、何十倍、何百倍も価値があるものだと信じて行動した。
つまり、日本の企業会計は、現実から完全に遊離したフィクションになってしまったのである。
何より、含み益は、経営の緊張感を殺ぐという弊害をもたらした。
経営に失敗して大きい損を出しても、値上がりした土地を切り売りして処理すれば、バランスシートに大きい変化は現れない。
バランスシートは経営者が自分たちの成績を株主に見せる通知表である。
莫大な含み益は、日本企業の経営者に、期末テストでカンニングが自由にできるような状況を作り出したのだ。
含み益がいくらあるかは、経営の中枢にいる者しか調べようがない。
そして、最初はよくわかっているつもりでいた経営者自身も、そのうち、「なんだか無限に近いくらいたくさんある」という暖昧な認識で済ませるようになってしまった。
土地の値上がりを表面に出さないで、「含み」として控えめに評価しているつもりでいたら、無限に過大評価することになってしまった。
それが80年代末の土地バブルの正体である。
公表される帳簿と現実とが遊離する状況が日常になり、そのうち、現実を正確に把握できる人がいなくなってしまった。
含み益がいくらあるか、誰もわからない。
やがて、90年代になって、土地が値下がりした。
今度は、含み損がいくらあるか、誰もわからない。
これは、当然の帰結である。
本来、企業の経済活動は複雑で、その全貌は容易に把握できるものではない。
だからこそ、それを少しでも正確に把握しようとして、人類は、バランスシートを発明し、進化させてきた。
バブルに踊った日本企業は、その人類の叡智を軽んじた報いを受けたのである。
企業の会計がいかに複雑で把握しにくいかは、サラリーマンの家計のことを考えてみれば、よくわかる。
サラリーマンの家計は、企業の会計とは比較にならないくらい単純である。
毎月必ず給料が振り込まれる。
それを、1ヵ月間、もたせるだけでいい。
仕入れたモノが必ず売れて儲けが出るとは限らない企業の会計とは大違いである。
しかし、給料を1ヵ月間計画的に使うことさえ、多くの人にとっては難しい。
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